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『徹底的なユーザー寄り目線でマーケティング ー三浦哲志さん』
─ b.mode合同会社
2016.1.19
「エンドユーザーにとことん届かせる」マーケティングを強みとした様々なWebソリューションを手がけ、自らを”ICTビジネスマン”とする三浦 哲志さん。今、あらゆる業種から熱い視線が注がれる「ウェブ解析士」の資格を、その黎明期に取得するなどの時流ハンターでもあります。穏やかで、常に周囲に人があつまる三浦さんの、意外にロックな精神とは?
【三浦 哲志さん b.mode合同会社代表】代表的な仕事
・大学、専門学校サイト、行政公式サイト、観光協会公式サイトの構築
・会員専用ECサイト(ネットショップ)の構築
・ECサイト向け物流管理システム構築
・医療系予約システム構築
・イベントキャンペーン企画&サイト構築
・iPhone & Android アプリ開発 ほか
- 建築の仕事からWebマーケティングへ
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「仙台IT飲み会」「仙台ITビジネス研究会」「MT東北(CMS MovableTypeの研究・普及会)」など、地域のICTを盛り上げるいくつもの団体に所属する三浦哲志さん。Webシステム開発、Webマーケティング分析などを手がける「b.mode合同会社」の代表者だ。
「10代の頃にははっきりと、30歳までに起業したいなと考えていました」という三浦さん。「職人の父親が自分で仕事を回すのを見て育ったためでしょうか、自分は人に使われるタイプ、サラリーマンになって安心できるタイプではないと考えていたようです(笑)」。
三浦さんは建築系の学校を卒業し、故郷・秋田県の建設会社で仕事をしていた。しかし一念発起して仙台へ移動。「仙台を選んだのは、地元の両親を気にかけられる距離でありながら、より商圏が大きなこと。ここで自分を試したいと思いました」。仙台ではゼロからスタート。建築設計事務所の業務を行いながら、もともと好きだったデザインの業務や、サイトのディレクション業務を行っていた。
29歳のとき、合同会社を設立。合同会社はアメリカでは一般的な形態で、国内では「Apple Japan」などがある。「この合同会社の形態は、当時施行されたてで世間の関心が高かったこと、そして役員全員が業務執行役という点に心を惹かれました。皆が仕事をするという形がいいよね、と(笑)」。新しい会社は、当初は得意分野のインテリアの販売とデザイン業務を2つの柱としたが、やがて「何かに抜きんでた、尖った会社にしたい」と、ICT分野に一本化した。当時のWebサービスは今ほど成熟したものではなかった。従来のTVや紙といったマーケティング・ツールに代わる次のツールとして、Webへの流れが起こり始めたばかりの頃だ。
2010年に新しい資格「ウェブ解析士」が設立される。三浦さんはこれを知り、即座に取得した。「ウェブ解析士」とは、事業に関わるあらゆるデータを取得・分析し、Webの成果を事業の成果につなげることができる人材の育成を目的とした資格制度だ。Webマーケティングの知識と技術を深くカバーし、三浦さんは「明確な理論でマーケティングを行っていく『ウェブ解析』の知見が、これは新しいと思った」と話す。
近年は中央部と地方の情報格差はほぼ消えてきたと言われる。とはいえ、仙台でこうした時流をいち早く捉える情報力と行動力が三浦さんの持ち味だ。
昨今の「マーケティング=Web」とも言えそうな状況で、今や「ウェブ解析士」の知識はマーケティング全般を深くフォローする。あらゆる業種の企業が熱い視線を注ぎ、大手企業も社員研修に採用するようになっている。
ちなみに現在、三浦さんは、難関「ウェブ解析士マスター」の有資格者として、 教育訓練や企業セミナーなどでの人材育成にもあたっている。
- フレームはユーザーを中心に
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Webサイトの依頼がくると、三浦さんは案件に「コンサルタント」の目線で取り組む。Webサイト制作には「目的」が重視されるが、三浦さんはその目的を明確にするだけではなく、目的達成へ向けたクライアントとの共通認識を醸成する過程にも目を向けていく。「例えばですが、クライアント様に、サイトを利用するユーザーのペルソナ(ユーザーモデル)を、ご自身で考えてみて頂くこともあります」。その上で、こう問いかけてみる。『そのペルソナにとって、ご希望のデザインのマナーは適正か。サイトのUI(操作や情報表示の仕組み)は、分かりすそうか。今やレスポンシブデザイン*はスタンダードだが、そのペルソナに対し本当にスマホ対応まで必要か?』など。
「もちろん、クライアント様にご満足頂きたいと考えます。同時に、私はその先のエンドユーザーの姿を常に意識します。使いやすいUIや心に届きやすいコンテンツを設計することはクライアント様の満足、つまりマーケティングの成功へと繋がっていくはずですから」。
このユーザー目線が、三浦さんの仕事の基本だ。「エンドユーザーの目線で思考をつきつめるうちに、このECサイト(ネットショップ)は本当に必要ですか? という結論がちらりと覗くこともあります」と三浦さん。「それでは私が商売にならないですね(笑)。しかしそうした性質の案件なら、サイト制作だけにこだわらず、サイト以外の媒体も併用してより合理的な予算配分を考えていくなど、クライアント様の目的を達成させるためのアレンジは無数にあるはずです」。
一方で、「Webマーケティングには常に正解はありません」と三浦さん。だから三浦さんは、分析し仮説を立てて、効果を検証するPDCAサイクルをクライアントと回していく過程を重視するのだという。こうした仕事の根底には、以前デザイン業務の中でDTP(印刷)も手がけてきた体験も生きている。
例えばチラシを紙で配布した時、これを何人が見て何人が実際に行動を起こし、彼らが店でどんな購買行動を取ったかといった具体的なデータをどう得るか。従来の広告手法では、その効果測定法が広く論じられてきた。「ICTによるマーケティングは、こうしたデータが、その気になれば誰でも、ある程度明確な数値として得られます。かつてブラックボックスになりがちだった『広告効果』の部分をホワイト化したいと思いますし、今は時代がそうであることを求めていますね」。そんな三浦さんの印象に残る仕事は、地域に関わりの深いECサイトのリニューアル。「クライアント様と一緒に、サイト・ターゲットのペルソナを考え、皆で1つずつサイトの課題をあぶり出し、仮説をもとにUIやデザインを策定していきました」。売り手の熱意を体感することができた仕事だったという。
*レスポンシブデザイン
PC・タブレット・スマホといった様々な機器の画面サイズに合わせた適正表示を、同一のファイルで対応させるウェブ制作の手法。
- 仙台に「外貨」を落としたい
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仙台は東北最大の都市。しかしその商圏は、東京や大阪規模の都市に比較すれば小さい。 三浦さんは話す。「ビジネス的な意味では、仙台はどうしても大都市に叶わないでしょう。例えば首都圏では、何だこれ? 何に使うんだろう? というほどニッチな商品を扱う小さな店が、ずっと残っていたりしますよね。首都圏は圧倒的に人口が多いですよ」。
しかし、ビジネスマンとして、三浦さんはそうした仙台の商圏サイズも面白い。「というのは、地域の小売業の方が販路を拡大したいと考えたとき。商圏に限界があるなら、オンラインで全国や海外に売ればいいのではないかという思考法になりますよね。さらに、仙台では『ウェブ解析』の視点を伴うWebマーケティングの実践はまだ出遅れていると感じます。これは、先にやった者勝ちかな…なんてところがありますよね(笑)」。まして、東北は、一次産業・二次産業の分野で、農産物や海産物・加工食品や伝統工芸品などの「商材」が豊かな土地だ。
一方で、三浦さんが気になるのは「仙台は全体的にハングリー精神が足りない」点。「仙台は首都圏に近く行き来も多いせいでしょうか。例えば九州は全国的にも名高いECサイトの激戦区ですが、発想的には、ここは本州と離れた土地だという前提があるように見えます。この地から大商圏に物を売ろう! というパワーが凄いのですね」。
仙台が「おとなしい」理由の1つとして、三浦さんは仙台の経済が「支店経済」であることを指摘する。仙台は、全国規模で展開する企業の支店や子会社が多数進出し、自分自身で強い動きを起こさなくても収入を得ていきやすいのだ。
もちろん、安定した手堅い仕事に就くメリットは魅力だ。「しかしこれでは、地方は中央部にお金を吸い取られていくばかりです。地方がもっと活性化していくには、地域に”外貨”を落とす流れを皆で作っていくしかないな、と最近強く思うのです」と三浦さんは話す。実は今、三浦さんが目を向けているのが自社「b.mode」の首都圏展開だ。自社を窓口として仙台に仕事を運び、地域をもっと盛り上げたいと考えている。「仙台・そして東北には商売ネタがある、ボーダーレスなICTというツールがある。さらに、Webシステム構築やアプリケーション開発など、非常に優秀なICT技術者が、仙台にはたくさんいます」と三浦さん。「だからこそ弊社は地域であえて『出る杭』になってやろうかなと(笑)。人のネットワークを充実させて、やがては、全国の方々から『b.modeって何だかきいたことがあるね』と言われるようなICT企業へと育てたいですね」。
〈事務局より〉 周辺に人が集まり、集まると「気づいたらねえねえ、新しいことやろうよなんて、声をかけていたりします」という三浦さん。そうした幅広い交流も仕事の源のようです。
様々な企業で既に一般的なツールであるECサイトについては、これからますますユーザー目線が大事になるとのこと。「その商品を伝える1ページの作成にじっくりと時間をかけられないサイトは、今後だんだん埋もれていってしまうでしょうね」と、この方向でも三浦さんの活躍の場は広そうです。
PROFILE:三浦 哲志さん
・弱電メーカー、専門学校非常勤講師、建築設計事務所などを経て現在に至る
・連日忙しいため「あさっては休めそうだ」など突発的に生まれる休みの前日に、宿を予約してどこかにふらり。
・仙台市から車で約1時間半の「鳴子温泉」。7つの泉質のお湯があるので楽しめ、特に、驚異の美肌になってしまう「しんとろの湯」は皆に勧めてしまいます。
・仙台市営地下鉄南北線「八乙女」駅ターミナル前の「ふく寿司」。親方が毎朝、卸町の中央卸売市場まで新鮮な魚介を仕入れにいくので美味しいですよ。自分へのご褒美のような感じで。
また、自社サービスも随時開発。クラウド型診療受付ASPサービスや、クラウド型簡易CMSサービスなどをリリースしています。
本社
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[三浦 哲志さん] 仕事依頼時の連絡先
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