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『「ビッグデータ」×「インバウンド」で人をつなぐ ー山内和彦さん』
  ─ 株式会社スプラウトジャパン 

2016.2.19

株式会社スプラウトジャパン代表

仙台を拠点に、注目の「ビッグデータ」を活用した経営ITコンサルタントを進める山内和彦さん。
その最もホットなプロジェクトは、この春グランドオープンする「海外向け観光情報サービス/JPEX」です。東北の魅力を海外にアピールするサービスの礎となる自社の強み「ビッグデータ」と、「地域の強み」のミックスとは──?

【山内 和彦さん 株式会社スプラウトジャパン代表】代表的な仕事
・JPEX/海外向け観光情報サービス(宮城県ITスタートアップ認定) / 観光分析ダッシュボード
・ネットショップビジネスの導入&コンサルティング / 通販業務向け需要予測・購買連動システム
・交通系レンタカーシステム(日本初)
・ビッグデータ活用(各種BI) / エリアマーケティング・OPENデータ活用(総務省) ほか
・医薬品データ利活用ビジネスモデルの創出
・MIJIS仙台ワークショップ実行委員長(全国より仙台へ300名の集客)


 
Made in 東北でボーダレスに

ここ数年急速に注目を浴びる「ビッグデータ」を活用し、仙台を拠点に活躍する山内和彦さん。株式会社スプラウトジャパンの代表取締役だ。
ビッグデータとは、IT普及に伴うSNSや電子マネーの利用など、人々の行動の「痕跡」として生じる膨大な量のデータのこと。さらに、これを処理・分析することで、ビジネスの計画や公共サービスの質の向上などに適正な方針を見いだせる。

「ただ、仙台ではビッグデータを活用するビジネスインテリジェンス(データを経営上などの意思決定に役立てる手法や技術)の普及はこれから。情報の価値と魅力をもっと伝えていければと思います」と山内さん。現在、山内さんは、大手流通系企業といった都内の案件を引き受けている。

そんなスプラウトジャパンは、東日本大震災の直後に立ち上げた若い企業だ。希少なブナの森の青森県白神山地出身の山内さんは、現在「いちばん落ち着く町」と仙台近郊の岩沼市に住みながら「私自身は、東北全域・日本・世界をフィールドとして活動したいと考えています。特に、東北の若い世代が東北でやりがいのある面白い仕事を作りたい」と、『Made in 東北』にこだわりながら、境界線にとらわれないITサービスの強みを話す。

身近な”ビッグデータ”

データには、どのような価値があるのだろう。
「例えば、東北に外国の方に来てもらうためのマーケティングを行う場合。観光系オープンデータから、様々なヒントが見えてきます」。 分かりやすい一例として、山内さんは訪日オーストラリア人の行動分析を説明してくれた。
これによると、オーストラリア人は、「訪日満足度はトップクラス」「スキーなどのアクテビティが大好き」「個人旅行客が断然多い」「比較的裕福」などの特長があるらしいことが見えてくる。「そこで、オーストラリアに対して団体旅行の広告は、大きな効果は期待できないという仮説が立てられます」。

などと、山内さんの提示と説明は明確で平易だ。というのも、「『ビッグデータ』は、本来、もっと身近で便利なものだと感じて欲しいのです。そのために、分かりやすい言葉を選んで価値を伝えたいと考えています。専門家にしか分からない説明では意味がないですからね(笑)」。 さらに、どんなデータをどんな切り口で見ればヒントが見えるかの分析が、山内さんの腕の見せ所。ITエンジニア、商社マン、IT営業など、現在までの職歴で身についた大局的センスも生きてくる。

ビジネスへのデータ活用にはさらに見逃せないメリットがある。ビッグデータを平易に身近に扱えることで、経験の浅い若手社員でも、ベテラン社員の豊富なノウハウを共有することができるのだ。山内流に表現すると『経験とカンとビッグデータのハイブリッド』。経験、カンという感覚を大事にしつつ、そのパワーの増幅を、IT技術を通じて引き出すことが山内さんの仕事の基本だ。

「東北は首都圏に比べ市場も小さいなどのデメリットもあります。しかし、情報を最大限生かした戦略をうつことで、多くの企業が存分に戦えますよ」と、山内さんは話す。

株式会社スプラウトジャパン代表2

インバウンド×ビッグデータ

そんな自社のコンピタンスを活かして、山内さんらが2015年に立ち上げたサービスが、「海外向け観光情報サービス JPEX」だ。
JPEXのヒントは、震災ボランティアを通じて知り合った海外の友人の言葉。「東北はいいところがこんなにあるのに伝え方が下手だよ。だから外国の人はTOHOKUを知らない人が多いよ」と、逆に外国の方に東北の魅力をいくつも教えられたことから始まるという。

「JPEXへは、東北の商品や人々それぞれが”タレント”となり、みんなで東北の魅力を発信し、盛り上げていけるプラットフォーム(場・土台)にしたいという思いがあります。そして、外国の人たちに東北を知って頂くため、あの手この手の手段を仕掛けていきます」。

「作り手」としての山内さんは、一過性の商品開発的なものではなく、「人」と、人々がつながる「動線」づくりにこの事業の価値を持たせていく。

「JPEXでは、何かを実現させるとき、いろんな方や団体に協働してもらうことがあります。半ば無茶ぶりで人を巻き込ませていただくこともあります(笑)。しかし結果としてその輪がどんどん良い方向に広がる。この流れがとても大切なんです」と山内さん。 「JEPXが目指したいのは、皆がそれぞれの立場で出来ることを無理なく持ち寄り、自分たちも楽しみながらみんなで経済的にももっと豊かになることです。Made in 東北のサービスで、東北の皆が生活も心もさらに豊かになれば最高です」。

昨年、台湾の観光イベントでプレリリースした際の反応も上々。その台湾では『インバウンドとは片思いの状態。もっと相手のことを知って好きになるべき』と実感したという山内さん。「次は5月の台湾旅行博にもう一度出向き、東北インフォメーションとして東北の魅力を発信することが目標です」。オーストラリアの友人には『東北は全てがすばらしい。東京や京都などの真似ではなく、東北の良さを自信をもって伝えればいい』と励まされたという。

ビッグデータ×インバウンド。自社の技術の新しい局面だ。
山内さんはさらにJPEXの近い未来の姿を話す。それは、この事業が2つの意味での地域のプラットフォームであることだ。「1つめは東北の『地産地消のプラットフォーム』。さらに2つめは『ITのプラットフォーム』。点として存在している東北の様々なIT技術をつなぐことです」。そんな山内さん自身は、”タレント”たちの裏方役に徹する「IT番頭さん」でありたいのだそうだ。

山内さんのスプラウトジャパンには、将来の起業を宣言して入社する若手もいるという。「そんな気概を持った若者も大歓迎です。将来の起業という選択肢を持っていた方が視野が広がり、仕事への姿勢も真剣になれるはず。当然、ずっと一緒に働くという選択肢だってあります(笑)」と山内さん。少々型破りでみずみずしいこの企業で、専門ITスキルを活かしてボーダレスなビジネスを創成していく道も魅力的だ。

〈事務局より〉 山内さんの起業のきっかけとしては、東日本大震災時に住まいやご家族を失なった方の一言が背中を押したそうです。”生きてさえいれば何度だってやり直しがきくよ”。「この一言が染みました。起業にあたり、私は持てるものを何も失っていないのに、失うことを恐れていると」と、山内さん。
起業後は、スピード感を楽しむ毎日のようです。たった2週間ほどの間に新しいビジネスプランの決行を決断することもあるとか。現在は、様々な業種からの相談を引き受ける一方で、ビッグデータ×インバウンドの検証と発展に力を傾けています。


 

PROFILE:山内 和彦さん

略歴
・IT系の専門学校を経て、東北大地域イノベーションプロデューサ塾(RIPS)へ
・ITエンジニア、商社勤務、IT営業職などを経て現在に至る

 
主資格
・ITコーディネーター
・情報処理第二種
・医師情報技師 など

 
Off Time
・ランニング。今の目標は2016年5月の仙台ハーフマラソン。なんと社員2人も出場します。
・社として仕事とプライベートのOn&Offを推奨しています。引き出しが充実することで、実は仕事の幅も広がるんですよね。

 
好きな仙台
・米と水が美味しいせいか日本酒が美味い。東北各地の地酒は、四季があり、物語があり、一層美味しく感じます。若い杜氏が作る酒の今風のセンスなども楽しいのです。
・「コンパクトCtiy」。都会と田舎のバランスが絶妙です。都会で働くけど住むのは田舎なんて最高ですよね(笑)。
・雪が少ないこと。豪雪地帯育ちですが、冬は1日に3回も雪かきした環境とだいぶ違います。

 
株式会社スプラウトジャパン
[事業内容:ビッグデータ活用支援サービス、インバウンドマーケティング支援サービス、ECビジネスマネージメントサービス、経営ITコンサルティング]

株式会社スプラウトジャパン3

企業について
ICTには無限の可能性があります。日本と海外、都市と地方、産業の違い、価値観の違い、いろんなボーダーを越えて「つながる」ことで、新しいビジネスモデルやサービスを生み出すことが可能です スプラウトジャパンのある東北は今、新しいスタートの時を迎えています。無いものを数えるのではなく、今ある武器を最大限活かすことで、Made in Japan, Made in Tohoku のサービスを創り、お客さまのサービスと産業の発展に貢献することが、私たちスプラウトジャパンの使命だと思っています。

 

仙台オフィス
〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央2-2-10 仙都会館ビル6階

[山内 和彦さん] 仕事依頼時の連絡先
株式会社スプラウトジャパン
Tel.022-797-3916