企業を知る

『エンドユーザーとダイレクトに向き合う ー佐藤 悠さん』
  ─ 株式会社ディストーション・ヴィーツ 

2015.11.20

株式会社ディストーション・ヴィーツデザイナー1

街を動かすブランディングなど、仙台を基盤に多方面で活躍されるデザイナーの佐藤 悠さん。
デザインと真摯に向きあう姿が素敵な佐藤さんの仕事についてお伺いしました。
「ユーザーと深く向き合うことができる街」のメリットとは──?

【佐藤 悠さん デザイナー】代表的な仕事
・第3回 国連防災世界会議公式ロゴマーク
・同上せんだいメディアテーク開催「東北防災・復興パビリオン」展の制作
・仙台市内企業、飲食・美容店などのグラフィックデザイン など多数


 
仙台でデザインを深化

都内の大学卒業後に仙台にUターンした佐藤さんは、その理由をこのように話す。「仙台は首都圏よりもデザインしたものとユーザーとの距離が近いと感じたからです。 祖父が製造小売業を始め、この家業を見てきたため、エンドユーザーと近いもののデザインをしたいと思いました。当時はこんなに明確に考えていなかったと思うのですが(笑)」。
環境のよさもあり、仙台でチャレンジしたいと思ったという。


 
エンドユーザーとの距離が近い

仙台での仕事のメリットの1つとして、佐藤さんは仙台という都市のサイズ感を指摘する。 「仙台は都心部がおおむね徒歩圏なので、日常の中でダイレクトにクライアントやユーザのイメージを感じとりやすい。これは大切な要素の1つです」。

なぜかというと、デザインは伝達の手段という考え方が佐藤さんの根底を為すからだ。
「たとえばミネラルウォーターのボトルを想像してみてください。たいていの方は『デザイン』を誤解されていて、デザインとは、ボトルのラベルの色や絵柄を考えることだと思われるようです。でも、本来の『デザイン』は、『この水がどこからやってくるか。水をどんな人に売るか』といった大きな計画の中の1部分です」。仙台はこのプロセスの全体に関わりやすい。「この理解の深度が深まるほど、仕事のクオリティーを高めていけるのです」。

反面、成果への責任が増える。例えば首都圏の代理店は、大人数・大規模な案件のやりがいがある。しかし、最近になって、佐藤さんは、都内代理店にいる同窓生がふと、”自分が作っている気がなかなかしない”と漏らすのを聞いたという。「なるほど、仙台では仕事面でこうした違いはあるかもしれないなと感じたことはあります」。
大規模プロジェクトから個人店舗のブランディングまで、多彩な案件の責任を意識して仕事をこなす佐藤さんらしい捉えかただ。
さらに、「作り手」の佐藤さんとしては、仙台は印刷工場や施工業者との距離が近いため、プロトタイプ制作などのやりとりに利便性が高いことに、非常に魅力を感じるそうだ。


 
RGBの可能性をもっと

一般的なグラフィックデザインのクオリティーを平均すると、仙台と首都圏それぞれの魅力があるように感じると佐藤さん。
「ただ、新しいデザインテクノロジーの広がりはかなり遅れてきます。 東京駅100周年記念で注目されたプロジェクションマッピングや、AR(仮想現実)、立体視を使った表現は、まだ仙台ではあまり見られません。デジタルサイネージやそれを活用したクレジット決済なども、首都圏や海外では早くから導入されていました」。佐藤さんは、こうした技術を情報として知らないことで、様々な選択肢がせばまりやすい点を指摘する。

株式会社ディストーション・ヴィーツデザイナー2

◯佐藤さんが制作に参加した第3回国連防災世界会議「東北防災・復興パビリオン」展(下写真も同様)
Design: SSD Design Team
Supervisor: Yasuaki Onoda (Tohoku University)
Organized by: The UN World Conference on Disaster Risk Reduction
Committee, Aomori Prefecture, Iwate Prefecture, Miyagi Prefecture, Fukushima Prefecture, and Sendai City
[photographed by Koichi Torimura]

「例えばWebと紙の媒体とで情報の伝わり方に違いがあるように、『色』も、光のRGB(加法混色)と、印刷のCMYK(減法混色)の違いがあります。全く別の概念で成りたっているものなので、お互いを補完できるように深化していくと理想的です。
印刷技術は16世紀に生まれました。ITは20世紀の技術なので、私はもっと多くのデザインの可能性があると感じるんです」。仙台でこうしたことを試していきたいと佐藤さんは話す。

なお、佐藤さんはITについても、充分に進化したように見えて、インターフェースの作りひとつにもまだ進化できる余地があると感じるという。「例えばネットに対する親和性がユーザの間で二極化していますが、インターフェースなどで解消できることも少なからずあると感じます」。また、Webサイトのデザインについても、多くのサイトがCMYK的な表現の延長で作られていることが多いと佐藤さんは分析する。
「RGB独自の新しい魅力的な見え方は多くあるはずです。これからどんどん新しいRGB表現が生まれてきますよ」。その追求は現在まだ始まったばかりの場所にあると、佐藤さんの表現への好奇心は尽きない。

株式会社ディストーション・ヴィーツデザイナー3

〈事務局より〉 ある個人店のブランディング案件で、佐藤さんは、店主に「自店の品がこんな写真になるとは思わなかった」と喜ばれたことがあるといいます。洗練された伝え方は東京だからできるものだと考えていたようです。今、その店は複数の店舗を展開する企業へと成長しています。デザインを「ツール」と冷静に捉えて、街のユーザーたちとじかに向きあう責任を楽しみながらデザインワークをする姿が印象的な佐藤さん。これに見合う高い評価を受けながら、佐藤さんは活躍のフィールドを多彩に広げています。


 

PROFILE:佐藤 悠さん

略歴
・武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
・仙台市と東北大学の協働事業「せんだいスクール・オブ・デザイン」修了

 
Off Time
・運動をする(ヨガもしくはジム)
・「製本部」(シルクスクリーンや製本の有志の集まり)で個人的なデザインワーク
・首都圏の展覧会などの観覧

 
好きな仙台
・宮城県美術館(建築)
・せんだいメディアテーク(建築)
・賣茶翁(和菓子店)

 
株式会社ディストーション・ヴィーツ
[事業内容:イベントプランニング、グラフィックデザイン、ブランディング]

株式会社ディストーション・ヴィーツデザイナー4

企業について
“ディストーション・ヴィーツ”には、ある音色に対し変化を響かせるという趣意を込めました。わたしたちの関わりによって、様々なことがより良く移り変わるように、多彩なことに取り組んでいます。
〇イベント事業
1998年に地元仙台・大町の地域の方々と協働で、アート作品や雑貨などそれぞれの価値観を交換(Trade)し交流する場としての「西公園トレーディングマーケット」をスタート。2000年からはナイトマーケット、2008年にはお花見「桟敷席」を開催。そのほかイベントプランニングにも多数携わり、市民や地元の方々と共に楽しめる取り組みを開催しています。
〇デザイン事業
ロゴデザインや広告などのグラフィックデザイン、パッケージデザインなどに幅広く携わってきました。何らかのきっかけではじまったある「課題」について、デザインという手法を用い「解決」へ導く考え方を示し、その結果また過程を検証。最適化・持続的な成長を目指し、貢献します。
◇最近のイベント

 

〒980-0804 宮城県仙台市青葉区大町2-5-20 1F
Tel. 022-215-1214 / Fax.022-723-5795

[佐藤 悠さん] 仕事依頼時の連絡先
E-mail info@uxoxo.info